ターゲットDM

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おはようございます。今日の横浜は少し肌寒いです。本社から見上げた空も少し薄曇りですね。

今日は本社→サテライト→アトリエの出社予定です。先日ご紹介したアドバトリアル型のDMの設計・制作を行います。

何年か前にN数は少ないのですがDMに関して面白い調査を行いました。

DMは決して安価なコミュニケーション手段ではないと思われています。したがってレスポンスがゼロになるとクライアントの精神的なダメージも少なくありません。

「今回のDMはどこに問題があったのだろうか?」とプロジェクトは大いに迷います。
そこでプロジェクトで「じゃあ電話して聞いてみよう」ということになりました。

サンプル数(N数)は100でした。ちなみに総数は3000通です。
案の定、DMが到着したことを認知されていなかった件数は60%にも及びました。
20%は読んでいただいたけれどあまり興味はお持ちいただけていないようでした。

しかし最後の残り約10%の方からは、なんと感謝の言葉をいただきました。
ちなみに怒ってゴミ箱に叩き込んだ方はいませんでした。千人に1名の割合でそうした方もいると聞いたことがありますが、この調査ではいらっしゃいませんでした。

「え!DMで感謝なんてされる?」

そう思われるかもしれませんが、DMの内容が単なる売込みではなければ「貴重な情報」として感謝されることもあるのです。そして、何回かのコミュニケーションの後に成約するのです。

もちろんこれは高額商品にしか費用対効果が合致しませんが。

先日も5年前から定期的にターゲットDMを送付しているクライアントから、「森本さん、5年前からの我々のDMの愛読者から注文をいただきました。数千万円規模の大きな仕事です」と話されました。「愛読者」という言葉に笑ってしまいましたが、どうもその通りらしいのです。

① ターゲットが完全に絞られておりターゲットに到達できるリスト情報がある。
② ターゲットに継続的に提供できる情報がある。
③ バックエンド商品が高額商品である。

この条件を満たせばDMは決して時代遅れのマーケティングツールなどではなく、いまだにコストパフォーマンスのよい強力なツールのひとつであると考えます。

さて頑張って反応をいただけるDMを設計します!!

購入障壁

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今日はこれから日帰り出張です。

このEX-ICを利用するようになり新幹線での出張が驚くほどストレスがなくなりました。予約はもちろん変更、座席の指定が出発前まで何度でも可能です。

こんなに便利ならもっと早く導入しておけばよかった。
さて今日は購入障壁のお話です。笑

人は問題解決の期待・特別な体験の期待で商品を購入しますとお話をしていますが、同時に未知の商品や未知の体験に対しては少なからず不安を感じます。
この不安が購入障壁となります。

つまりこれまで他社の商品では解決できなかった問題を解決できる商品や、これまで体験したことがない特別な体験を提供できる何かは、未知の商品、未知の体験に他ならず、同時に購入障壁が高い商品と言えます。

つまりこうした商品の売り上げを伸ばすために重要なことは、その差別化を訴えることだけでなく、購入の不安を取り除くことなのです。

購入障壁が何かを知るひとつの方法は購入者に雑談で聞いてみることです。
「購入前に何が不安でしたか?」「購入後はその不安はどうなりましたか?」と。

また自分でもぜひ考えてみてください。「うちの商品を購入する時に何が不安だろう?」「どう説明すればその不安は解消されるのだろう?」と。

ぜひ一度、カードに考えられる購入障壁をすべて書き出してみましょう。

例えば

・ すぐに壊れるのではないか?
・ 期待通りの機能がないのではないか?
・ 自分には不要ではないのか?
・ 想定していないコストが必要なのではないか?
・ 自分には不釣り合いではないか?
・ 人から白い目で見られるのではないか?
・ 他にもっと安くてよい選択肢があるのではないか?
・ すぐに決めてしまうのは軽率だと思われないか?
・ 後悔するのではないか?
・ 期待するサービスを受けられないのではないか?
・ 危険ではないのか?

そしてその不安を解消するための言葉、仕組み、訴求方法を考えてみてください。
では今日も一緒に1ミリ前進しましょう!!

アドバトリアル

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皆さんはアドバトリアルという言葉をご存じでしょうか?

アドバトリアルとは記事広告のことです。新聞や雑誌などにおいて記事とよく似た体裁で編集されたいわゆる広告です。

実は私は約10年間、地道にこのアドバトリアルの研究を行い、新たなマーケティングツールとしての可能性を模索してきました。

その結果、一定の成果を獲得し新たなマーケテンング手法を完成させました。

通常の記事広告は新聞や雑誌又はインターネットに掲載されるだけですが、我々はターゲット顧客に対して記事をダイレクトメールでレポートを送付する、という新たな方法を試み成果を上げてきました。つまり「記事なんだから媒体に掲載して読んでもらう」というあたりまえのことを捨て、この記事を読んでもらいたい方に直接、送付するという方法を選択したのです。

当初はアドバトリアルを研究するため数百編の記事広告を読みましたが、残念ながら参考にできるものはありませんでした。

ほとんどの記事広告は広告臭がぬぐえませんでした。同時に顧客視点を感じることができませんでした。

一方でやはり本物の「記事」には圧倒的な説得力がありました。
そこで考えたのがコロンブスの卵ですが記事広告ではなく本物の「記事」を制作するという方法でした。

私たちは「広告だからクライアントの要望通りに制作する」というあたりまえのことを捨てることにしました。それが突破口でした。
記事と同じように取材して、記者が独自に感じた切り口で紹介記事を書く。特に商品やサービスの提供先や顧客を取材させていただくことで、レポートを迫力のあるものにすることができました。

またクライアントの商品やサービスだけでなく読者の視点から、その背景なども丁寧に取材を行い記事を制作しました。つまり顧客視点=クライアント視点ではなく、顧客視点=読者視点で記事を制作するということです。結果として記事の約50%~70%はクライアントの製品やサービスのことは直接的には書かないというスタイルが完成しました。このことが結果としてクライアントの提供する問題解決=商品に、読者に方々が強い興味を持っていただく理由となりました。

これが結果としてクライアントのためになります。

制作した記事はクライアントに読んでいただき、事実誤認がある箇所は修正を入れますが、表現の誇張などの依頼は原則として、その事実が確認できない場合や、表現上又はコンプライアンス上に問題があると判断した場合には修正をお断りします。

この場合、納得いただけなけらばこの原稿は「没」とします。
これが弊社のコンプライアンスです。

しかしながら、原稿を読んでいただいた後に、現在までに納得できない修正依頼をいただいたことも、もちろん制作した原稿が「没」になったことも一度もありません。

ほとんどのクライアントは記事に感動していただけました。

手順は、

1.クライアント又はクライアントの顧客を取材させていただき、
2.記事(レポート)を制作させていただく。
3.記事(レポート)をクライアントに確認していただき弊社の媒体で記事として掲載する。
4.記事(レポート)の著作権の二次利用権を許諾させていただく。

二次利用とはA4二つ折りの別刷りやターゲットDM、クライアントのホームページでの掲載などで、その印刷やDMなどもサポートします。

一例ですが5年間も毎年1~2回、DMとして発送している記事は、毎回、3000通の発送に対して30通(1%)~60通(2%)のレスポンスがあります。ちなみに数百万円~数千万円する商材で、この記事をきっかけにコンスタントに毎年、数億円の売り上げを上げています。

また送付先からは「いつも貴重な情報をありがとうございます」と感謝の言葉をいただいています。また、同梱しているアンケートには、コメントが必ず記入されています。

弊社には約10年も出版社と共に実証実験を重ねたノウハウがあります。
特に広告宣伝が難しい医療関連分野で成果を上げています。

これからこのマーケティング手法の事業化を進めたいと考えております。

また続報をご案内させていただきます。
ご興味のある方はご連絡をいただきましたら過去に発行した記事を送付させていただきます。

morimoto@lbraintrust.co.jp

「記事広告の件」とお書きください。

6日ぶりに横浜に帰ってきました。

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6日ぶりに横浜に帰ってきました。本当に充実した特別な出張でした。

スペシャルエクスペリエンスマーケティングについてこのブログで記事を書いていますが、来月号の月刊マーケティングでは購読者の皆さまに動画で詳しく説明させていただきます。

さて「人は特別な体験の期待で商品を購入します」と述べてきました。

それは問題解決することにより訪れる特別な体験であったり、又は特別な体験そのものが購入理由になることもあります。

購入理由となる特別な体験は五感と密接な関係があります。
今さらですが5感とは「視覚」「聴覚」「味覚」「触覚」「嗅覚」のことです。

今までに見たことがない景色=視覚
聞いたことがないきれいな音=聴覚
食べたことがないようなとろける味=味覚
触ったことがないふわふわのさわり心地=触覚
嗅いだことがないいい匂い=嗅覚

こうしたことはまさに特別な体験=スペシャルエクスペリエンスです。
購入した後に訪れる感覚をクリエイティブ(言葉・写真・動画・デザインのすべて)で表現しておくと理性とセットで感情を動かすことができます。

さて今日は子供たちと小さなスペシャルエクスペリエンスを楽しんで来ます!
皆さんもよい休日を。

思考と言動と行動

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クライアントにとって2棟目となる高齢者施設が竣工。本日はそのオープンイベントをサポートさせていただきました。終日天気もよくたくさんの方にご来場をいただきました。本当にありがとうございました。

数年前。異業種からの参入ではじまったこの事業は決して順調ではありませんでした。さまざまな手を尽くしましたが集客が功を奏しませんでした。

その頃、私はご縁があってプロジェクティングの手法で解決策をプロジェクトチームで協議し、それを答申案としてまとめる一連のお手伝いをさせていただくことになりました。

隔週で1泊2日でご訪問させていただき、深夜までミーティングを重ね、私も泊り込んで資料を精査させていただきました。もう何年も前のことですが。

その後、プロジェクトで立てた仮説戦略のテストマーケティングを成功させ、その後、答申案は正式に採択されました。それから、新たな戦略と戦術の下でスタッフの皆さまの情熱により、右肩上がりに業績を伸ばすことに成功しました。

地域の中でもこの施設の高い理念、高い接遇・マナーや独自性の高い事業コンセプトは称賛を集めるようになり、医療・福祉のプロフェッショナルからの圧倒的な支持をいただくようになりました。もちろん今ではすっかり確固たる存在となられています。

そしてさらに約10年間もじっくりとノウハウを積み重ね続け、いよいよ2棟目の建設計画が発表され、そして今日のオープンイベントを迎えることになりました。

この施設は経営トップ自らが在宅介護を行った時に抱いた想いから誕生しました。
「自分の家族を託せる施設」「家族の心で接する」ことを理念としています。

この言葉には一切の裏表はありませんでした。どんなに苦しい時にもそのコンセプトだけは決して捨てることはありませんでした。思考と言動と行動は常に一致していました。それは簡単なようでとても難しいことです。難しいことですがとても素晴らしいことです。そしてそれをブレることなく今日まで守り続けてこられました。そしてこれからも守られ続けていかれることと思います。

すばらしい施設が完成しました。本当におめでとうございます!
長期出張の最後の1日は、また忘れることのできない特別な1日となりました。

人は特別の体験の期待で商品を購入し未体験の不安で商品の購入を躊躇する

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岡山駅に到着すると桃太郎の家来の猿が鳩を大切そうに抱えていました。笑
超癒されます。

さてエクスペリエンスマーケティングの続きです。

今夜の話題は引き続きエクスペリエンスです。
人は「特別な体験」の期待で商品を購入し、未体験の不安で商品の購入を躊躇する。

商品=問題解決です。電気ドリルを購入するお客さまは、電気ドリルマニアでもないかぎりは電気ドリルそのものではなく、穴が欲しくて電気ドリルという問題解決手段を買いに来たと理解することができます。

ではそこには特別な体験=スペシャル・エクスペリエンス(SE)の要素はないのか?
実は心理学的に最後の購入のスイッチを入れるのは、上記のような理詰めの理由よりもスペシャルエクスペリエンスの期待の方が効果的です。

つまり電気ドリルで穴を空ける利便性と共に、その爽快感を訴求した方が感情のスイッチは入れやすいのではないかと思います。

テレビショッピングやデパートの実演販売などの多くも、理詰めの理由(問題解決)と共にそれがスペシャル・エクスペリエンスであることを訴求しています。

すごい切れ味の包丁にしろ、ひと拭きで油汚れが落ちる洗剤でも、その問題解決にスペシャルエクスペリエンスが付加されて購入のスイッチを入れています。

スペシャルエクスペリエンスはそれが戦略にポジショニングされたり、戦術にポジショニングされることもある、まるで万能細胞のような、マーケティング・ファクターではないかと思います。そう考えると研究対象としてはとても面白いものですね。

今、マスコミでとても話題になっている日本一星がきれいな村の阿智村の成功例などを考えると問題解決だけでは説明が付き難いものがありますが、スペシャルエクスペリエンスの考え方を入れるととてもスッと腑に落ちてきます。見たことがないほどの絶景の星空は問題解決要素はほとんどなくスペシャルエクスペリエンスがコンセプトになっているのでしょう。

同時に人は未体験のものに対して危険や不安を感じます。だからこそ、エクスペリエンスマーケティングで重要なのは購入障壁の撤廃だと思います。この話題はまた改めて。

まずは皆さんに宿題です。あなたの商品のスペシャルエクスペリエンスが何かを考えて、それを文章にしてみてください。あなたの商品を購入することで体験できることを、できるだけ臨場感たっぷりに文章で表現してみてください!

マーケテンングミックスはどのように変化するのか?

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出張5日目です。おはようございます。今日もよい天気で朝から最高の気分です。
今日はいよいよクライアントの新規店舗のオープンイベントです。

さて本日もちょっとマーケティング理論に関してお話をしてみたいと思います。マーケティングミックスという言葉があります。商品の販売を行うための重要要素の組み合わせです。

通常、マーケティングミックスと聞かれれば「4P」を差します。

4Pとは、

製品(Product)
価格(Price)
流通(Place)
広告・宣伝(Promotion)

です。これはマーケティング理論の中では古典ですが、今も重要な考え方だと思います。
ちなみにマーケティングミックスは何度も新たな理論が提唱されています。

例えば4Cです。マーケティングミックスは4Pから4Cへと変化するという主張です。

製品(Product)は顧客価値(Customer Value)へ
価格(Price)は顧客にとってのコスト(Cost)へ
流通(Place)は顧客の利便性(Convenience)へ
広告(Promotion)は顧客とのコミュニケーション(Communication)へ

私が初めて4Cを知った時は、あまりピンとこなかった項目もあるのですが、時代は確かに4Cの方向へと流れているような気がします。

4Pと同様に同じ頭文字にしたいばかりに分かりにくいものも含まれていますが。笑

しかしここで重要なことは4Cも4Pのフレームの上にあるということです。
4Pをしっかり理解しておくと自分なりのマーケティングミックス、つまりどのようなことを大切にして販売戦略を行うべきかを考えることができるようになります。

ぜひ自分だけのマーケティングミックスを作ってください。英語にする必要も、頭文字を合わせる必要もありません。笑

私は、

「製品」は「お客さまの問題解決」と「お客さまに提供する特別な体験(エクスペリエンス)」へ
「価格」は原価積み上げではなく「価値に対する対価」へ
「流通(プレイス)」はインターネットや、さまざまな場所で販売する「マルチプレイス」へ
「広告」は確かに「コミュニケーション」へ、そしてそこで行われるのは「広告」ではなく信頼性の高い「約束」へ変わるのではないかと考えています。

・ 製品は問題解決と特別な体験へ
・ 価格は価値の対価へ
・ 流通はマルチプレイスへ
・ 広告はコミュニケーション、そして約束へ

心して推進していきます。

スペシャルエクスペリエンスマーケティング

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5泊6日の出張中。今日でちょうど折り返し地点です。
そして今日は11時から2時頃まで出張先で時間が出来ましたのでボートに乗ってきました。笑 森の向こうに城が見えます。

誰もいない川をひとりボートを満喫してきました。
とは言えほとんど木陰にボートを浮かべて、そこでたくさん考え事をしていたのですが。
もちろんクライアントのこと、仕事のことです。

ちなみに中学生の頃に友達がなぜかボート屋さんでアルバイトをしていて、毎日のようにそこに遊びに行っていたので、ボートはそこそこに扱えます。ちなみに当時は和船も漕げてました。今も漕ぎ方は覚えています。笑

おかげさまで超多忙にさせていただいておりますが、パフォーマンスを上げるために、すきま時間には自分でも思いも掛けない場所に行ったり、思いがけないことにトライするようにしています。そして今日はボート。笑

最近、人は「商品」を購入しなくなったと言われています。モノを買わなくなったという意味ではありません。お客さまは商品やサービスではなくその先にある体験(experience)を購入しているという意味だそうです。

これまでは「商品=問題解決」だけで多くのことを説明づけられてきましたが、最近では体験=エクスペリエンスでしか説明できないことがたくさん起きています。

「なぜ森本さんはボートに乗るのですか?」
そう質問されても確かにうまく答えられません。せいぜいがリフレッシュのため?とか。笑

でも明確なのはボートに乗る前には川面にボートで浮かんでぼんやりと考え事をする自分。
音のない世界と、そこに吹くさわやかな晩春の風。ゆらゆらと川に流されていくボート。
癒されていく自分が明確に思い浮かび、僕は強くボートに乗ることを欲しました。
そしてボートに乗ったら思い描いた通りの世界があり僕は大満足することができました。

明確な理由などなくその体験=エクスペリエンスそのものを僕は購入したということになります。これが最も購入者である自分の腑に落ちる説明です。

この場合、必要なのは顧客が考えてもいなかったスペシャルエクスペリエンスを疑似体験できる仕組みと購入障壁(=ひとりで背広着てボートに乗れるのか?笑)をいかに無くすかという点だけだと思います。

ある事例を思い浮かべてスペシャルエクスペリエンスマーケティングはB2Bビジネスでも応用可能かもしれない。そんなことをボートの上で考えました。

森本式マーケティングをそろそろバージョンアップさせようかと考えています。

なぜマッチ売りの少女は億万長者になれたのか?

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このブログの中の過去の記事で、いくつか今もよく読まれている記事があります。そのひとつが2007年9月に公開した「あなたがマッチ売りの少女なら?」という記事です。少しだけリライトしてお届けします。

あなたはクリスチャン・アンデルセンのマッチ売りの少女の話を知っていますか?

それは雪の降る大晦日の夜の話です。頭巾もかぶらず、裸足のままで、古いエプロンに入れたマッチを売り歩いていた少女がいました。
あわてて大通りをわたろうとしたときに、馬車がすごいスピードで駆け抜けて靴がぬげてしまったのです。
「マッチはいりませんか?マッチはいりませんか?」
でも少女からマッチを買ってくれる人はひとりもいませんでした。やがて少女は空腹と寒さでついに路地に座り込んでしまいました。そしてマッチを1本取り出すと壁にこすりつけ火を付けました。ほんの少しでも暖を取りたかったのです。マッチをこするとさまざまなものが現れました。おいしそうな料理、温かい部屋、そして最後に現れたのは亡くなった少女のおばあさん。
「おばあちゃん、お願い私も連れていって」
少女はありったけのマッチをすりました。
翌朝、路地で死んでいる少女が発見されたそうです。しかし少女の顔は天使のような微笑みを浮かべていたそうです。

救いのない話なのですがマッチ売りの少女の物語にもしも秘密があるとしたら。もしクリスチャン・アンデルセンが残酷な世界観の中で、ポジティブな何かを伝えたかったとしたら。
こう考えると少しちがう世界が見えてきます。少女は結果的にマッチが1本も売れずに死にました。
夢の中でおばあちゃんに迎えられ、幸せな最後だったかもしれませんが、それでもこの話には救いはありません。しかし、マッチ売りの少女が、実はあの大晦日の日に生還し、その後、経営者として成功し、幸せな億万長者になったとしたら。この物語にはモノが売れない悲惨さが描かれています。もしかしたらマッチ売りの少女は自分達ではないのか?そんなことすら考えてしまいます。

もしクリスチャン・アンデルセンが、マッチ売りの少女の童話を、子供たちに向けたビジネスの教科書として書いたとしたら、この物語から見えてくるものは大きく変わってゆきます。

それは「マッチ売りの少女はなぜ1本のマッチも売ることができなかったのか?」と考え始めることです。

あなたは考えてみたことがありますか?

大晦日に雪が降る中で裸足でマッチを売る少女のマッチ。そこには残念ながら商品の信頼性はありません。雪の中で裸足という姿は少女の信頼性を損ない、同時に少女の売っている商品であるマッチの信頼性も損ねています。このミスは今も多くの会社が犯しています。商品をどうみせるかだけでなく、商品を販売しているあなたや、あなたの会社をどう見せるか?商品がよくても商品は売れません。商品がよさそうでなくては誰も購入してくれません。商品をよさそうに見せるためには、商品だけではなく、販売者もよさそうに見せる必要があるのです。

売られている商品は「マッチ」です。壁にこすって火を付けていることから、1831年に開発された改良型黄燐マッチだと思われます。クリスチャン・アンデルセンがマッチ売りの少女の話を発表したのは1848年ですから、この改良型黄燐マッチが開発されてから17年が経過しています。しかし、この物語は貧乏だった彼の母親のエピソードがベースにあるとした説もあります。この場合、反対に壁にこするだけで簡単に着火できる改良型黄燐マッチは画期的な新製品だった可能性もあるのです。しかし、少女が仕入れて販売しているぐらいですから、いずれにしろ、少女だけが販売しているようなものではなさそうです。つまりライバルはたくさんいて差別化できていない状況なのだと思われます。

ではこの場合にマッチ売りの少女は何ができたのか?それは顧客へのメッセージの伝え方を変えることができたのです。そしてそもそも差別化されていない商品を抱え、そこに伝えるべきメッセージを持っていなかったのが少女のマッチが売れなかった理由です。

少女は「マッチはいりませんか?」と連呼しました。これだけではマッチは売れません。でも今も多くの会社が同じ過ちを犯しています。大企業はそれこそ何十億もかけて「マッチはいりませんか?」とテレビで連呼しているのです。

ではどうするのか?まずメッセージは明確に以下の④つが必要です。

① この製品は誰のためのものか?(ターゲット)
② 誰のどのような問題を解決できるのか?(問題解決)
③ この製品を購入することで具体的に顧客の仕事や生活はどのように変わるのか?
④ なぜ他社ではなく私から購入すべきか(ライバル・差別化)

ではマッチ売りの少女はあの日、あの時に何ができたのでしょうか?少女はおそらく1円のお金も持っていなかったはずです。マーケティング予算はゼロです。チラシ1枚配れません。

あの日、あの大晦日の夜。あの時間に雪の降る状況の中で、そしてこの製品だけで勝負するしかないのです。
さああなたならどうしますか?何ができると思いますか?

マッチ売りの少女の話は遠い昔の異国のエピソードではありません。マッチ売りの少女は御社なのかもしれません。

さああなたも本気で考えてみてください!

マッチ売りの少女が命を落とすことなく、幸せになる穴座ストーリーが始まります。
まずはあの大晦日の夜の局面を乗り越えなくてはなりません。条件は以下の通りです。

販促予算はゼロ、誰もが家路を急ぐ雪が降る大晦日の夜。製品は差別化されていないありふれたマッチ。あなたはみすぼらしい服装に裸足です。

行えることは本当にたくさんありますが、このケースで考えてみるべきことは、何でもないマッチに何らかのコンセプトを与えることです。

商品=製品+付加価値です。しかし、製品を作り変えることは困難で、マーケティング予算ゼロの少女には、包装を行うことすらできません。ここでできるのはおそらくコンセプトを与えることではないかと思います。

ここからアナザワールドヘとご案内します。

マッチ売りの少女はすぐに教会に行きます。おして神父さんにお願いをします。「マッチを一束寄付させていただきます。お願いがあります。これは私が売っているマッチです。このマッチを使う人がみんな幸せになれるように、どうかお祈りを捧げていただけませんか?」と。

マッチは神父の祈りが込められたマッチとなりました。さらにお願いを試みます。「今晩だけ聖歌隊のあの赤い靴と服と帽子を貸してもらえませんか?」と。

そして少女はできるだけ明るい街灯の下で歌を歌います。足を止めてくれた人にこう言います。

「みなさんは今年はいい年でしたか?」
「あまりいい年ではなかったよ!という方のために、お伝えしたいことがあります」
「マッチを1本だけ買ってください」
「このマッチはみなさんの来年の幸せを願い神父さまが心を込めてお祈りしてくださった特別なマッチです」
「このマッチで新年の最初のランプを灯してください」
「そうすれば来年はきっといい年になります」
「幸せのマッチはいかがですか?どこでも買えない幸せのマッチはいかがですか?」

ここまではあくまでもこの日を乗り越えるための緊急避難的な手段です。
本当の勝負はここからです。そしてクリスチャン・アンデルセンは、もしかしたらとんでもないビジネスのヒントをこのストーリーの中に残していたかもしれません。

ところでマッチ売りの少女はなぜ死んでしまったのか?空腹と寒さで眠ってしまって凍死した?いえおそらく違います。少女はおばあさんの幻を消さないためにすべてのマッチを擦りました。これがおそらく少女の死因です。

兵庫県姫路市の地場産業はマッチです。そしてこの地場産業を紹介するホームページにはこんな記載があります。

「1831年にフランスの「ソーリア」と「カメレール」によって、どこで擦っても容易に発火するマッチが開発されました。ただ、黄燐マッチは毒性が強く、殺人や自殺などに使用された事もありました。さらに、移動中の摩擦や衝撃による火災事故も頻発したため、より安全なマッチの開発が期待されていました。」

マッチ売りの少女が発表されたのが1843年です。この年号を覚えておいてください。同じホームページにはこんな情報が掲載されています。

「1850年前後から赤燐を用いたマッチの開発が、ヨーロッパ各国ですすめられていましたが、1852年、スウェーデンにあったヨンコピング社のルンドストレームがリンを含まない頭薬を点着した軸木を小箱に納め、その箱の側面に赤燐を側薬として塗布 した分離型の「安全マッチ」を発明し、特許を得ました。そして彼は1855年、純粋な 赤燐を用いた「スウェーデン式 安全マッチ」を製造し広く販売しました。これ以後、スウェーデンは世界のマッチ工業の首位となっていきました。」

引用: ガンバレ姫路のモノづくり じばさん館

もしこの日にマッチ売りの少女が生還することができたら、自ら黄燐マッチの危険性を体験したことになります。そして安全なマッチをいつか作ろうと決心したかもしれません。

そして物語はこう書き換えられていたかもしれません。 

「デンマークで開発された安全マッチは世界のマッチ工業の首位となった。このマッチを開発したのは、デンマークでマッチを売っていた少女。彼女はクリスマスや誕生日など特別な日のための特別なマッチを企画して会社を大きくした後に、その資金を安全なマッチの開発に費やし開発に成功した。億万長者となった彼女は貧しい子供たちの保護施設をいくつも作り、晩年は子供たちに囲まれ幸せな一生をおくったそうである」

マーケティングはすべての人を幸せにする力があります。

顧客視点を失った先にあるもの

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『かつてソニーは、エンジニア1人1人の思い入れやアイディアや遊び心を大切にしてくれました。1990年代までは会議ではお客さまをどう喜ばせるか、そんなことばかり本気で話し合っていました。しかしいつの間にかサムスンに負けた、LGの売り上げが良かったという話題ばかりになってしまった。利益や効率、コスト、、金儲けの話ばかりになってしまったんです』

出展:http://news.nifty.com/cs/economy/economyalldetail/postseven-408158/1.htm
「サポ終了のAIBO「修理工房」を運営するソニーOBの心意気」

上記は出典の記事の中のソニーOBの方の言葉を引用させてもらったものです。私もかつて同じようなことを感じたことがあります。

「森本くん、いつまでそんな甘いことを言ってるつもりなんだ」

私が働いていた会社のある役員の言葉です。

それは年度部門方針のヒアリングの時でした。
私が立てた年度部門方針を読んでその役員はその内容を「甘い」と表現されました。
その年度部門方針とは次のようなものでした。

『徹底した顧客視点に立ち差別化された商品を創出する』

結局、私の年度方針を支持してくださる別の役員の方がいて、この年度部門方針は採択されました。その後もこれは私の人生を賭けた大きなテーマとなりました。

上場と共に私がいた会社も少しだけ変わりました。利益や効率、コストが最も重要な課題と認識されることが多くなり、チャレンジングな提案には慎重になりました。それはしかたがないことだったのだと思います。

最近、ある経営者の方からこんな言葉を聞きました。

「いまうちの業界は本当に大変な状況で、とてもじゃないけどお客さまのことなんか考えてる場合じゃないんですよ」

残念ながら顧客視点を失うと未来も失います。

利益や効率、コストを志向することに何の問題もありません。
問題なのは完全にそちら側だけに傾きすぎることなんだと思います。

会社や業界が厳しい時に生き残りを賭けて全力を尽くすことは絶対です。
でもそこで顧客視点を失うと、乗り越えた先には荒野が広がることになります。

日本の会社に伝えたいことがまだまだたくさんあります。